RIE NAKAJIMA
宮島の夏は暑い。
暑いが、意外に木陰や日陰が多く、海からの風もあるので、過ごせないことはない。
そう思って、ある夏の盛りの8月1日、子どもたちを連れて宮島に行った。
宮島水族館で、カブトムシのつがいを無料でもらえるイベントがあったのだ。
カブトムシがなくならないよう、朝イチで宮島に渡り、水族館を目指して歩き始める。
水族館までは大人の脚で歩いても20分はかかるので、海の中の魚を見つけたり、鹿にあいさつしたり、ベンチでジュースを飲んだりしながら、のんびり時間をかけて行く。
水族館はメイン通りの商店街から少し離れた海沿いにあり、こんもりとした緑に囲まれているので少し涼しいような気がする。
お目当てのカブトムシは大量に用意されていて、無事にもらうことができた。
久しぶりに館内を観てまわる。
ちなみに宮島水族館は、規模はそこまで大きくないが、展示にこだわりを感じられて面白い。
水族館なのに、飼育環境の温度管理をして、1年中、カブトムシの幼虫から成体までを見られるようにしている。
バックヤードツアーでは、水族館なのにミヤジマトンボなどのヤゴもたくさん飼育されているのが見られ、昆虫好きの末っ子が大満足していた。
ふれあい体験でアザラシもナデナデできたし、別棟の「はつこい庵」でドクターフィッシュに両手をツンツンされたりもして満喫した。
さて、問題は帰りである。
子どもはともあれ、私はもう暑い中を歩く力が残っていないので、帰りはバスに乗ることにした。
ただ、本数がそれほどあるわけではないため、待ち時間が結構ある。
上2人は木陰でゲームをするというので、末っ子と2人であたりを散策した。
ひとけのない、鬱蒼とした木立に、セミの鳴き声が響いている。
「セミだね。」
「うん。セミを探そう。」
ところが、どうしたわけか、鳴き声はするのに姿が見えない。
末っ子と一緒に、首を90度に曲げて、ぐっと木を見上げる。
木が高すぎる───。

宮島は神様の島だから、むやみに木を切ったりしないのだと聞いたことがある。
だから、森は植生がとても豊かで、高木はとても背が高い。
家の近所の街路樹とは、モノが違う。
セミは高い木の上のほうで、影も形も見せずにゆうゆうと鳴いていた。
キミタチニハ、ミツカラナイヨ───
というように。
見上げた木の葉の隙間から、青い空が覗いていた。
それを見て、自分が子どもの頃、夏に新潟の神社でセミとりをした記憶がふっと蘇った。
たくさんとれた日で、最後に籠を開けると、セミたちはいっせいに舞い上がり、木の葉の隙間の空に飛んで行った。
おそらく宮島ほど高い木ではなかったが、とても高いように感じたのは、自分が子どもだったせいかもしれない。
あたりには、相変わらずセミの声だけが響いている。
結局、粘り勝ちした末っ子が、一匹だけ少し下のほうにとまっていたセミを発見した。
お馴染みのクマゼミや、比較的小さなニイニイゼミとも違って、かなり小型のセミだった。
そのときはわからなかったが、数年後、立派な子ども昆虫博士に成長した末っ子によると、あのとき見たセミは「たぶんチッチゼミ」だということだ。
宮島では、春にもハルゼミというセミが鳴くらしい。
いつか末っ子と探しに行きたい。
