宮島とフランス――約9,700キロメートル離れた二つの世界遺産を結ぶ、意外な共通点とは!?/嚴島神社、モン・サン=ミッシェル

今なお続く交流の物語
海に浮かぶ二つの信仰の地

宮島を歩いていると、フランス人観光客の姿をよく目にします。その理由は、宮島から約9,700キロメートル先にある"世界遺産"との意外な縁にありました。

その“世界遺産”とは、フランス北西部・ノルマンディー地方の沖合に浮かぶモン・サン=ミッシェル。小さな岩島の上に築かれた修道院で、1979年に世界遺産に登録。カトリックの重要な巡礼地の一つとしても知られています。

宮島にもまた、世界に誇る遺産があります。それが嚴島神社です。海上に建つ社殿と大鳥居で知られ、1996年に世界遺産に登録されました。古くから信仰を集める日本有数の神社の一つです。

モン・サン=ミッシェル
嚴島神社

こうした共通点から2009年、廿日市市とモン・サン=ミッシェル市は観光友好都市提携を締結。海に浮かぶ世界遺産同士として、海を越えたつながりは今なお続いています。

宮島に渡ってすぐの宮島桟橋にある特設コーナー

世界遺産がつないだ、甘い出会い
海を越えて生まれた宮島スイーツ

【やまだ屋

宮島で有名な老舗和菓子店・やまだ屋の「宮島ポミエ」も、そのつながりから生まれた商品の一つ。

「ポミエ」はフランス語で“リンゴの木”を意味し、フランスのノルマンディー地方の名産物であるリンゴと宮島発祥のもみじ饅頭を掛け合わせて誕生しました。

リンゴの果肉入りカスタードクリームをふんわりとしたカステラ生地で包み込んだ一品です。店舗限定で販売されているため、宮島を訪れた際はぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

リンゴの焼き印が可愛い宮島ポミエは1個170円

国際交流が生んだ新しい味わい
モン・サン=ミッシェルの塩を使った進化系もみじ饅頭坂本菓子舗】

もう一つ紹介したいのが、表参道商店街から一本離れた町家通りに位置する坂本菓子舗。ここでは、モン・サン=ミッシェル近郊の塩とニュージーランド産バターを使用した「塩バターもみじ」を販売しています。

ここで、「ニュージーランド」という言葉に注目してほしいのですが、実はニュージーランドにある都市・マスタートンも廿日市市の姉妹都市の一つ。海外都市との友好関係をもとに、老舗もみじ饅頭店ならではの技術を生かしながら、和と洋の魅力を融合させた一品です。

定番のもみじ饅頭を食べ慣れた人にも新鮮な味わいで、旅のおやつやお土産にもぴったり。塩のほどよいアクセントとバターの風味が広がり、宮島スイーツの新たな魅力を感じさせてくれます。

餡のない新感覚もみじ饅頭



嚴島神社や弥山など日本古来の歴史だけでなく、実は海外との交流の歴史も息づく宮島。モン・サン=ミッシェルとの縁から生まれたスイーツを味わえば、いつもの観光とは少し違った島の表情が見えてくるかもしれません。

約9,700キロメートル離れた世界遺産の島同士を結ぶ物語を、スイーツを通して楽しんでみてはいかがでしょうか。

観光姉妹提携10周年を記念し、期間限定で設置された嚴島神社の鳥居



【DATA】
■やまだ屋
住所/廿日市市宮島町835-1
TEL/080-3352-3235
営業時間/9:00~18:00
休み/なし

■坂本菓子舗
住所/廿日市市宮島町455
TEL/0829-44-0380
営業時間/9:00~17:00
休み/不定休

ライトアップされた嚴島神社をたたえた海に、月明かりが映る。夜の宮島で十数年越しのお礼参り 

十年以上前、結婚して東京から広島に移住するという報告をしたとき、仕事仲間のデザイナーがこんな話をしてくれた。 

「広島といえば、少し前、妻と一緒に宮島に行ったんですよ。宮島の旅館に泊まって、夜、散歩をしたんです。 

ほとんど満月の夜で、嚴島神社の周りの海に、丸い月明かりが映っていてね。 

それがすごく綺麗で、妻と『綺麗だね~』ってずっと見ていたんです。 

……そしたらね、授かったんですよ。」 

長年、子どもを授からず、「もうそろそろ、あきらめるしかないかもしれないね」と話していた折のことだったという。 

目の奥に広がった夜の宮島の情景とともに、夫婦の感慨が心に染みて、とても印象的だった。 

その時点で、高齢出産に定義される35歳に差し掛かりそうだった私も、ひとごととは思えなかったというのもある。 

その後、広島で夫の故郷の廿日市市に移り、当然のように市内で一番の名所である嚴島神社にお参りに行った。 

日中だったが、海の中に建てられた風情ある境内に感動し、「平清盛ってとんでもないな」と圧倒されたのを覚えている。 

ただ、夜の宮島を訪れる機会はなかった。 

それから数年の間に3人の子を授かり、夜に出歩くこと自体、極端に減ったからだ。 

そんなことを考えていたら、ふと、夜の宮島に行きたくなった。 

あの日から、ずっと記憶の中に、自分で経験したかのような夜の宮島の風景があったのだ。 

子どもたちもある程度大きくなった、今なら連れて行けるじゃないか。 

───十数年越しのお礼参りだ。 

せっかくなので、あの夫婦が見た、海に浮かぶ月明かりの嚴島神社が見たい。 

宮島観光協会のウェブサイトにある潮見表で、夜の浅めの時間に満潮になる日を選び、子どもたちを誘って出かけて行った。 

本当は宿泊できたら良いのだけど、夜になると便数が減るフェリーの時間さえ把握しておけば、日帰りでも夜の宮島を楽しめる。 

夕方のフェリーに乗って、宮島へ。 

島内を歩く人は日中に比べれば少ないが、思ったよりも人出がある。 

嚴島神社の参拝終了時刻は、季節によって夕方の5時から6時までだ。 

まずは久しぶりの参拝をする。 

境内は人が少なく、厳かな緊張感がある。 

───おかげさまで家族皆、元気です。ありがとうございます。 

実はこのときまで、「夜の宮島に行きたい」ということが優先事項で、子を授かったのが嚴島神社にお参りをしたからだ、とまで思っていなかった。 

ただ、実際にお礼参りをしてみると、いやいや、すべてつながっているじゃないか、と腑に落ちる。 

あの日、デザイナーにあの話を聞いて、広島でここまで子育てができて、良かった。 

参拝後、曜日によって夜も開いているお好み焼きの「まとちゃん」で食事をする。 

宮島は観光客が帰る夕方で閉まる店が多いから、事前に調べておいたのだ。 

お腹が満たされたあとは、日没待ちだ。 

海辺の石段に並んで座り、空が暗くなるのをひたすら待つ。 

天気が良かったので、思いがけず、海と空の壮大な夕焼けを見ることができた。 

淡い水色の空を、オレンジ色の光が水彩画のように彩っている。 

誰かと一緒に、海辺で日が沈むのを待つ時間は、とても贅沢だ。 

いつもより少しやわらかい声で、ゆっくり話をする。 

「今日は学校で、トモくんとトモトモと一緒に遊べたよ。」 

末っ子の話は、幼馴染の「トモくん」と、その友だちの「トモ友」のことだ。 

名前を呼ぶのが照れくさくて、ずっと「トモトモ」と呼んでいる。 

一方で、娘の友だちには「知らん人」という人がいる。 

その子も仲良しの子の友だちで、最初からあだ名で呼ぶのが気まずいので、お互いに「知らん人」と呼び合うようになったそうだ。 

そしてある日、 

「お、知らん人。」 

「あ、知らん人。」 

と、いつものようにあいさつを交わしていたら、横からぬっと「私も『知らん人』がいい」と言う子が現れ、今では3人で「知らん人」と呼び合っているという。 

私は笑いながら「ちゃんと名前を呼ぶことで、良い友だち関係が築けるんだよ」、と親らしいことを言って、夕焼けに目を戻す。 

そのとき海の向こうから、私が夫と知り合った当時、友人たちが彼をあだ名で呼ぶのを真似できなくて、結婚するまで「おにいさん」と呼んでいた記憶が、泡のように浮かんで消えた。 

こんなところまでつながっていたか───。 

と、なんだか力が抜けてしまう。 

日が沈むと、夜の嚴島神社はライトアップされる。 

夜の海に照らし出された嚴島神社は、膨大な時間に裏付けられた舞台のようで迫力がある。 

一方で、どこか女性的で雅な美しさも感じさせる。 

そういえば、嚴島神社の御祭神は、3人の女性の神様だったか。 

「女性の神様だから、カップルで行くと嫉妬されて別れることになる」 

なんてジンクスも聞いたことがあるが、そんなわけあるか、と思う。 

いくらなんでも、神様が人の名前も呼べない庶民に嫉妬することはないだろう。 

海水が境内の隅々までたっぷりと満たし、月明かりが静かに揺れている。 

───この景色を見たんですね。 

十数年ぶりに例の夫婦に共感して、ため息をついた。 

華やかな嚴島神社とは対照的に、森のほうに目をやると、闇が深い。 

「あっ、さかな!」 

生き物好きの末っ子が声を上げた。 

海の明かりの上を、魚がすっと横切ったのだ。 

ライトアップされた嚴島神社と月明かり、そこを横切る魚の風景が、私のもう一つの「夜の宮島」の記憶となった。 

宮島で涼を味わう ふわふわかき氷のカフェ&茶寮5選 広島をぎゅっとつめこんだ絶品氷菓

この「特別なひと品」を食べるために、宮島を訪れたくなる……そんな宝石のようなかき氷です。宮島巡りの1軒に、ぜひ加えてみてください。

広島産フルーツを贅沢に使ったシロップ
ふわふわ食感の氷にもこだわり/CAFE HAYASHIYA

向かって右:柑橘ヨーグルト1,800円

瀬戸内レモン、ネーブル、宮島産ゆず、沖美いちご、そして甘酒……色鮮やかな自家製シロップが、季節のフルーツとともに氷の上でキラキラ輝いているようなかき氷です。老舗製氷会社から取り寄せる氷にもこだわりが。

ゆっくりと凍らせた、純度の高い氷を丁寧にかくことで、このふわふわの食感に。まさに「高級洋菓子」のような風格なのです。

【DATA】
CAFE HAYASHIYA(カフェ ハヤシヤ)
住所/廿日市市宮島町504-5
TEL/080-1932-0335
営業時間/11:30~17:00(L.O.16:20)
休み/休業中につきInstagramで営業日をご確認下さい

新食感スイーツ…「ピンス」とは?
極上のくちどけを味わって/芝居茶寮 水羽

糸ピンス 宮島ロマン(もみじまんじゅう味) 1,500円

口の中でふんわりほどける……「ピンス」はパウダースノーのような口どけのスイーツです。中でも「糸ピンス」はミルクや果汁が氷の糸となってつむぎだされ、何層にも重なっている氷菓。繊細なミルクの甘さがとろけます。

旬のフルーツや揚げた紅葉まんじゅうのトッピングが楽しい。さらに練乳やバニラアイスを追加しても◎。

【DATA】
芝居茶寮 水羽
住所/廿日市市宮島町大町1-2
TEL/0829-44-1570
営業時間/10:30~16:00
休み/不定


抹茶の深みとあんの甘さ
もちもちの白玉にほっと和むぎゃらりぃ宮郷

宇治金時 (1000円+白玉トッピング100円)

美しい緑の抹茶が涼しげな宇治金時。ふわっふわの氷がやさしい口あたりです。ほどよいあんの甘さと、ほろ苦い抹茶の風味が、そっと疲れを癒してくれる「大人のかき氷」……もちもちの白玉は、ぜひ、つけていただきたいトッピングです。

趣深い古民家と、風情あるお庭の風景とともにゆっくりと時間を過ごしてください。

【DATA】
ぎゃらりぃ宮郷
住所/廿日市市宮島町幸町東表476
TEL/0829-44-2608
営業時間/10:00~18:00
休み/水曜


ほろ苦いほうじ茶が香る
大人のかき氷を楽しむ宮島茶寮 千景

ほうじ茶きな粉かき氷(1,900円)

お茶好きな人にぜひ味わっていただきたいかき氷。濃厚なほうじ茶の氷の中にアイスをしのばせ、上にはまろやかなミルクときな粉をトッピング。

甘さとほろ苦さが絶妙なバランスで口に広がります。さらりといただけて、奥深い。老舗旅館、岩惣の離れで、四季折々の情景を楽しめる茶寮です。

心地良い静けさの中で、上質な大人時間を楽しんでみては。

【DATA】
宮島茶寮 千景
住所/廿日市市宮島町南町346
TEL/なし
営業時間/甘味11:00~22:00、BAR18:00~22:00
(甘味、お酒ともに終日提供)
休み/水曜、不定

老舗もみじ饅頭店が
素材からこだわった繊細な味わい/藤い屋 宮島本店 菓寮

特製いちごシロップ(800円)

もみじ饅頭の老舗、藤い屋の宮島本店に併設された菓寮。ゆったりと落ち着く店内でいただくかき氷は、上品で繊細な逸品です。

職人が炊いたあんを使った宇治金時に加え、目を引くのは鮮やかないちごのかき氷。いちごを煮詰めて作る濃厚なシロップは、果実のおいしさがぎゅっとつまった贅沢なひと品となっています。お好みで白玉や練乳のトッピングも。

【DATA】
藤い屋  宮島本店菓寮
住所/廿廿日市市宮島町 1129(海岸通り)
TEL/0829-44-2221
営業時間/ 9:30-17:00
休み/なし

古今を融合した和洋菓子と建築美に癒される 宮島の玄関口に佇む菓子工房&カフェ/COCONCA

観光の合間に喧騒から離れ
上質なお菓子と風雅な意匠に触れる

JR宮島口駅とフェリー乗り場をつなぐにぎやかな通りで、ふと緑の庭を見つけたら……その小径を進んでみてください。木々の奥に1軒のパティスリーが静かに佇んでいます。

そこは、和洋の垣根を超えたスイーツをつくりだす菓子工房&カフェ。

店内には、キャラメルが香る「アンサブレ」や、サクサクのパイ生地にあんとクリームが入った「アンコロネ」など、古今和洋のお菓子が並びます。

瑞々しい季節のフルーツをふんだんに使った生菓子は、彩あざやかで見入ってしまうほど。そしてお菓子だけではなく、意匠を凝らした内装や、一面のガラス窓から見える庭も絵画のような美しさなのです。

旅の疲れをそっと癒してくれる
静謐で居心地のよいカフェ空間

ほっと一息つきたくなったら、ぜひ2階のカフェへ。1階でお菓子や飲み物を選んでから、階段を上がります。

ゆったりとしたカフェスペースは、和のしつらえに北欧デザイナーの名作椅子を合わせたなんとも贅沢な空間。飾られている茶道の茶椀や釜、作家が手掛けたランプもアートとして目を楽しませてくれます。

マリアージュフレールの紅茶や、生絞りの広島レモンのレモンフロートなど飲み物一つ一つにもこだわりが。夏に登場するかき氷は毎年いただきたくなる逸品です。

大きな窓から木々を眺めながら過ごしていると、つい時間を忘れてしまいそうに……。

伝統のあん作りを生かした
新しいおいしさの和洋菓子

「COCONCA」は百年の伝統を持つ、もみじ饅頭店「藤い屋」がプロデュース。「あんをさらに美味しく味わっていただきたい」との願いが込められているそうです。

素材からこだわり、伝統の技を生かして生み出された「和洋菓子」。美しい建築やインテリアとともに、特別な時間を過ごせます。

【DATA】
■COCONCA 本店
住所/廿日市市宮島口1-12-5
TEL/0829-20-5670
営業時間/1階店舗 10:00-17:30 、
2階カフェ 10:00-17:30(L.O.16:30)

広島名物「もみじ饅頭」はこうやって生まれた! 宮島で100年以上愛される定番お土産のルーツとは?/岩惣・高津堂

「広島のお土産」といえば何を思い浮かべますか?
お好み焼き、カキ、レモン……色々ありますが、やっぱり外せないのが「もみじ饅頭」ではないでしょうか。

今回は、知ると誰かに話したくなる、もみじ饅頭の誕生エピソードをご紹介します。

老舗旅館の女将のこだわり
誕生の裏にあった「おもてなしの心」

もみじ饅頭が誕生したのは、今から100年以上前の明治時代。

宮島の紅葉谷入り口にある老舗旅館「岩惣」へ宿泊していた初代総理大臣・伊藤博文が、茶屋の娘の手を見て「もみじのようにかわいい手を焼いて食べたらおいしそう」と冗談まじりで言ったことから始まります。

その冗談をかたわらで聞いていた女将さんが、「大切なお客様に、この紅葉谷の名にふさわしいお茶菓子を出したい」と、和菓子職人の高津堂初代店主、高津常助さんに相談したのがルーツだとされています。

当時最先端の洋菓子技術を取り入れた
もみじ饅頭の原型「紅葉形焼饅頭」

相談を受けた高津さんは試行錯誤を重ね、ついに美しいもみじの葉をリアルに再現した、現在のもみじ饅頭の原型となる「紅葉形焼饅頭」を完成させました。

「饅頭」という名前ですが、実は皮はふんわりとしたカステラ風生地。「お土産として持ち帰る間も固くならないように」という職人の優しさから、当時最先端の洋菓子技術が取り入れられました。

これが、今や誰もが知るもみじ饅頭の始まりです。

高津堂初代店主、高津常助さんが考案開発した型

明治、大正、昭和、平成……そして、令和へ
時代経て、もみじ饅頭が大進化

今では定番のあんこはもちろん、チョコやカスタード、チーズなどの多彩な味も登場。

さらに、衣をつけて揚げたものやディップして楽しむもの、クロワッサン生地を使った新感覚のもみじ饅頭まで、そのバリエーションはますます広がりを見せています。

もみじ饅頭は、「お土産和菓子」の枠を超え、時代のニーズを取り入れながら進化を続ける宮島の名物へと成長しました。

100年以上前に生まれた「おもてなしの心」が受け継がれたもみじ饅頭。そんな歴史や物語に思いを馳せながら、ぜひ味わってみてください。

【DATE】
髙津堂
住所/廿日市市宮島口西2-6-25
営業時間/8:00~18:00
定休日/年中無休

岩惣
住所/廿日市市宮島町南町345-1

休息が必要だ──。 「今日は何もしない」と決め、海を渡り、宮島の絶景カフェで羽を休めた日

公私ともにゴタゴタした日々が続き、疲労がピークに達していた。 

両肩が岩のように硬くなり、呼吸は不規則で浅く、指先が冷えている。 

休 息 が 必 要 だ────。 

いつもなら文庫本を持って布団にGOなのだけど、疲れていても身体は動きそうなとき、ひとりでふらっと出かけることがある。 

───遠くに行ってやる。 

───海を渡ってやる。 

というわけで、自宅と同じ市内にありながら、フェリーが遠出感を演出してくれる、宮島に行くことにした。 

実は仕事で知って、いつかプライベートで訪れてみたいと思っていた店があったのだ。 

宮島桟橋から人で賑わう表参道商店街を抜け、狭い路地に入り、さらに細い階段をのぼる。そこまで行くと人けはなく、看板もないので、場所を知らないと迷うかもしれない。 

少し急な階段にちょっと息が上がり、「これ、道あってる?」と不安になった頃、ようやくその店にたどり着く。 

宮島の珈琲店、伊都岐珈琲が手掛ける絶景カフェ「天心閣」だ。 

小さな門をくぐり、古民家を改装した店に入る。中はシンプルでおしゃれなカフェだ。ここは料金システムが少し変わっていて、大人ひとり550円の入場料がいる。その代わり、珈琲一杯110円と安価で、一度入場料を払えば、ドリンクやケーキを追加しながらゆっくり過ごすことができる。 

私のように、「今日は何もしないぞ」という人にはぴったりの店なのだ。 

何より、ウッドデッキのテラスからの眺めがすばらしい。 

見晴らしを遮る柵もなく、嚴島神社のある海と緑、観光名所にもなっている五重塔や千畳閣を見渡せる。 

絶景は絶景だが、パノラマというより、入江のややこぢんまりとした、ちょうど視界に収まる景色が、「知る人ぞ知る」感があって良い。 

テラスにはいくつか自然の樹も生えていて、さながら眺望の良い山の上でひと休みするような雰囲気だ。 

その日は平日だったからか、先客は外国人のカップルと、私のようなひとり客の2組のみ。 

晴れていて景色は最高、静かだが気まずさのない、のんびりあたたかな空気が漂っていた。 

───よし、よし。 

私は海を見渡す木陰の席に陣取り、注文した珈琲を待ちながら、読みかけの小説を開いた。 

ときどき、遠くで鳥のさえずりがこだまする。 

目が疲れたら、景色を見たり、珈琲をすすったり。 

カップルも景色を見るだけで、あまり会話をしない。 

ひとり客は、私と同じく文庫本を読んでいる。 

誰も人の邪魔をしない、あくせく動いたりもしない。 

暗黙の「のんびり過ごそう」同盟のもと、心地良い一体感が漂う。 

「あ。」 

小説が佳境にさしかかり、物語に隠された、とある「すごいこと」に気づいてしまい、わずかに声が出た。 

───これはすごい。 

興奮して、木のテーブルに本を伏せ、ふーっと大きく息を吐く。 

目の前の凪いだ入江の風景が、物語と現実の狭間で、動揺した私をゆったり包んでくれる。 

もう一度、文庫本を手に取り、衝撃をなぞる。 

───やられた~……。 

と、ひとりで身悶える。 

目を合わせることはしないけれど、カップルやひとり客に、「ちょっと、これ!」と共有したくなる。 

ピチチ、と鳥が平和に鳴いた。 

店を出て石段を下り、再び人で賑わう商店街を歩く。 

頭の中はまだ小説のことでいっぱいだが、どこからかソースの良い匂いが漂ってきて振り返る。 

───お腹すいたな。 

気づいたら、深い呼吸ができていた。 

江戸時代から続く技と願いを――今も伝え続ける伝統工芸「宮島御砂焼」の窯元へ/宮島御砂焼 対厳堂

神聖な「御砂」の焼き物は
広島県伝統的工芸品にも認定

やさしい彩色に宮島らしいモチーフ、手に包み込むと「土」のあたたかみも感じる、そんな器と出合いました。「宮島御砂焼」。広島を代表する伝統工芸品の一つです。

「御砂」とは、世界遺産、嚴島神社の砂。本殿下の神聖な「御砂」を、祈禱していただいた後土に混ぜ、焼きあげられているのです。

江戸時代、安芸の国で、嚴島神社本殿下の御砂を旅のお守りとしていた風習から始まったと伝えられています。

宮島御砂焼 対厳堂は、「嚴島神社御用窯」としてその伝統を守り続ける窯元。嚴島神社の祭器をはじめ、たくさんの作品が工房で製作されています。

旅の安全を願い、平和を祈る
人の思いを形にした作品

紅葉の葉を一枚一枚貼付け、デザインした「もみじ紋」は、あたたかい色味で、宮島らしい趣があるシリーズ。旅のお土産や、旅立ちを祝う縁起物としても喜ばれているそうです。

折鶴をモチーフとした「折鶴ランプ 燈」や「折鶴香炉 祈り」は平和への願いが込められた作品。

平和記念公園にある『原爆の子の像』へ捧げられた千羽鶴を、宮島最古の寺院、大聖院がお炊き上げを行い、その灰を釉薬として使っています。

「折鶴ランプ」は、岸田元総理によるウクライナ訪問の際、ゼレンスキー大統領に贈られたもの。またG7広島サミットにおいて、廿日市市長より全首脳陣にも贈呈されました。

宮島口駅にほど近い場所で築かれた
創業以来、伝統を守り続ける窯元へ

江戸時代から続く「安全に、無事に」という願い、「平和」への祈りが込められた宮島御砂焼。対厳堂に併設されている店舗・ギャラリーで、ゆっくり鑑賞してみては。

場所は、JR宮島口駅から徒歩で3分ほど。煉瓦造りの高い煙突に、連綿と受け継がれた窯元の思いと、歴史を感じる佇まいです。映画『ミステリと言う勿れ』の舞台にもなりました。

店内では絵付け体験も可能。「願い」を込めて筆をとってみるのも、よい旅の思い出と なりそうです(鉛筆で下書きもできます)。

【DATA】
■宮島御砂焼 対厳堂
住所/廿日市市宮島口1-3-39
TEL/0829-56-0027
営業時間/10:30~17:30 (絵付け体験の受付は10:30~15:00)
休/水曜(詳しくは、営業日カレンダーをご確認ください)

サク、サクと音を鳴らし、ビーチをゆったりと鹿が歩く。海を越えて訪れた娘さんが教えてくれた宮島の風景 

私にはフィルという、イギリスに住むハーフの従兄弟がいるのだが、あるときフィルと奥さんのサリーちゃん、幼い2人の娘さんがうちに泊まりに来ることになった。 

フィルの父親が日本人であり、ルーツである日本を家族に見せたいということで、祖母の故郷である石川県や東京、大阪、そして広島を訪ねる大日本旅行の一貫だった。 

従兄弟といっても、フィルとはこれまでに数回会ったことがある程度で、サリーちゃんと娘たちは初対面だ。 

それなのに、彼らが宮島に来ると聞いたとき、つい「それなら、宮島と同じ廿日市市だから、うちに泊まったらいいよ」と言ってしまった。 

後日、フィルの父親である私の叔父から「実際に日本の人が生活している家に泊まらせてもらって、すごく面白かったみたいだよ。ありがとう」と感謝されたから、私の誘いは間違ってはいなかったはずだ。 

幼い我が家の子どもたちにとっても、良い国際体験になったことだろう。 

さらに言えば、私は語学留学をしたことがあるので、英語スキルには問題ない。 

ただ、従兄弟を除けば初対面のファミリーを招待して、気楽にもてなせるような、人間的なスキルがない。 

夫は英語ができないので、大人数が集まる場ではただ笑っているだけのタイプである私が、ひとりでホストを務めなければならない。 

おおごとである。 

横隔膜がいつもより数センチは浮いているような、そわそわした状態でその日を迎えた。 

加減がわからないので、夕飯はとりあえず地元のものを、と、牡蠣のオイル漬けや小イワシの天ぷら、お好み焼き、唐揚げ、ポテトサラダ、デザートに知り合いのお餅屋さんに頼んだきな粉のお団子などを出した。 

明らかに量が多すぎたようで、フィルにはきな粉に盛大にむせ返りながら、「ごめん、僕らでは食べきれなさそう」と恐縮させてしまった。 

ベビーフォトグラファーだというサリーちゃんはとにかく良い人で、私のぎこちないホストぶりをずっと笑顔で労ってくれていた。 

夫は後日、初めて聞いた私の英国仕込みの英語力よりも、「見たことないくらいしゃべってたね」ということに驚いていた。 

そのくらい、頑張ったのだ。 

夕食後は5人の未就学児たちがめいめいに遊び始め、ほほえましいカオスとなった。 

そのうちに、娘さんがスケッチブックに旅の思い出を描き始めた。 

サリーちゃんいわく、広島の街や平和記念公園、宮島では嚴島神社や表参道商店街をまわったという。 

なかでも娘さんが一番、印象に残ったのが、宮島のビーチで鹿が歩いている姿だったそうだ。 

なるほど、宮島に鹿がいるのは当然のように感じていたが、本来、森にいるはずの鹿がビーチにいるのは、不思議な光景に違いない。 

「アメイジング…… ディアーズ・オン・ザ・ビーチ……」 

娘さんは歌うようにこう言いながら、最初に鹿を描いた。 

ゆったりとビーチを歩く鹿の姿が、なかなかよく描けている。 

次に、海の青をペンで塗り始めた。 

さらさら… さらさらさら…… 

海の上には明るい水色の空が広がっていて、そこも塗り広げていく。 

さらさら… さらさらさら…… 

後ろでサリーちゃんが、「ペンがテーブルにはみ出ちゃうかもしれないから、何か敷く物を借りたほうが良くない?」と焦っていたが、その頃には緊張が緩んで疲れ果てていた私は、「大丈夫、気にしないで」と答え、娘さんが描く様子を見つめていた。 

心地良いペンの音と、娘さんが見た鹿とビーチの光景に、もう少し浸っていたかったのだ。 

サク、サク、と鹿が砂を踏む足音が聞こえてくるくらい、鮮明な風景が目の前に広がっていた。 

月日が経ち、あの日の疲れはすっかり忘れ、楽しかった時間と、鹿とビーチの記憶だけが残っている。 

海を越えて訪れた娘さんが、宮島の新しい魅力に気づかせてくれた。 

宮島観光の穴場スポットへ!嚴島神社から徒歩約10分、宮島最古の寺院「大聖院」を訪ねる/滝小路・五百羅漢・大聖院

宮島観光といえば海に浮かぶ嚴島神社や大鳥居が有名ですが、嚴島神社を出て西に歩けばそこには、静かな時間が流れるもう一つの名所があります。宮島最古の寺院「大聖院」です。

今回は、ただ目的地を目指すだけではなく、趣ある路地を歩き、愛らしいお地蔵さんたちに出会いながら、大聖院の魅力を満喫できる散策コースをご紹介します。賑やかな表参道とはひと味違う、宮島の穏やかな時間を楽しんでみませんか。

かつて高位の神職が暮らした
歴史情緒あふれる「滝小路」を歩く

大聖院へ向かうなら、嚴島神社の出口から西へ延びる「滝小路」を通るルートがおすすめ。

観光客で賑わう商店街を少し離れると、そこには静寂に包まれた趣深い町並みが広がります。かつてこの一帯は、嚴島神社に仕える高位の神職たちが暮らした特別な場所でした。

一方、隣の「柳小路」には商人や職人などが住み、当時の宮島では身分によって居住区が分かれていたと伝えられています。

滝小路には、今も伝統的な「宮島格子」を備えた町家や重厚な石垣、風格ある土塀が残り、まるで時代を遡ったような気分に。このエリアは「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されており、宮島の歴史や文化を身近に感じられる散策路として人気を集めています。

宮島格子
石垣
土塀

自分に似た顔のお地蔵さんが見つかる!?
ユーモラスな仕草に癒される「五百羅漢」

滝小路を抜けて進むと川のせせらぎが聞こえ、大聖院の表玄関「仁王門」へと続く石段が見えてきます。

門をくぐると、階段脇には「五百羅漢」と呼ばれるお地蔵さんがずらりと並び、参拝者を優しく迎えてくれます。色鮮やかなニット帽をかぶった姿が印象的で、一体一体異なる表情をしているのも魅力です。

穏やかに微笑むお地蔵さん、どこかユーモラスな仕草を見せるお地蔵さんなど、その姿を眺めているだけで自然と心が和みます。

「自分や家族に似た顔のお地蔵さんがきっと見つかる」ともいわれているので、ぜひお気に入りの一体を探してみてください。

1200年以上の歴史を刻む
弘法大師・空海ゆかりの古刹「大聖院」

大聖院の歴史は、今から1200年以上前の西暦806年にまでさかのぼります。

弘法大師・空海が霊峰「弥山」に心を動かされ、この地に開いたと伝わる宮島最古の寺院です。以来、鳥羽天皇をはじめとする歴代天皇の祈願所となり、さらに豊臣秀吉が歌会を催すなど、多くの歴史的人物とも深いゆかりを持っています。

実は明治時代まで、大聖院は嚴島神社の「別当寺」として重要な役割を担っていました。神社へ奉納する読経などを行い、神社と寺院が一体となって信仰を支えていたそうです。

神仏分離令によって現在の姿となりましたが、境内には今でも、かつて嚴島神社の本殿に祀られていた貴重な仏像(十一面観音菩薩など)が大切に引き継がれています。「嚴島神社」と「大聖院」は、2つで1つの聖地なのです。

嚴島神社を訪れた際は、少し足を延ばして、宮島のもう一つの魅力に出合う散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。

十一面観音菩薩

※神仏分離令:明治政府が1868年に発令した、神仏習合の慣習を禁止し、神道と仏教、神と仏、神社と寺院とを区別する政策

【DATA】
大聖院
住所/広島県廿日市市宮島町210
TEL/0829-44-0111

鳴き声はするのに姿は見えない。「神の島」の高木でくつろぐ宮島の夏のセミ 

宮島の夏は暑い。 

暑いが、意外に木陰や日陰が多く、海からの風もあるので、過ごせないことはない。 

そう思って、ある夏の盛りの8月1日、子どもたちを連れて宮島に行った。 

宮島水族館で、カブトムシのつがいを無料でもらえるイベントがあったのだ。 

カブトムシがなくならないよう、朝イチで宮島に渡り、水族館を目指して歩き始める。 

水族館までは大人の脚で歩いても20分はかかるので、海の中の魚を見つけたり、鹿にあいさつしたり、ベンチでジュースを飲んだりしながら、のんびり時間をかけて行く。 

水族館はメイン通りの商店街から少し離れた海沿いにあり、こんもりとした緑に囲まれているので少し涼しいような気がする。 

お目当てのカブトムシは大量に用意されていて、無事にもらうことができた。 

久しぶりに館内を観てまわる。 

ちなみに宮島水族館は、規模はそこまで大きくないが、展示にこだわりを感じられて面白い。 

水族館なのに、飼育環境の温度管理をして、1年中、カブトムシの幼虫から成体までを見られるようにしている。 

バックヤードツアーでは、水族館なのにミヤジマトンボなどのヤゴもたくさん飼育されているのが見られ、昆虫好きの末っ子が大満足していた。 

ふれあい体験でアザラシもナデナデできたし、別棟の「はつこい庵」でドクターフィッシュに両手をツンツンされたりもして満喫した。 

さて、問題は帰りである。 

子どもはともあれ、私はもう暑い中を歩く力が残っていないので、帰りはバスに乗ることにした。 

ただ、本数がそれほどあるわけではないため、待ち時間が結構ある。 

上2人は木陰でゲームをするというので、末っ子と2人であたりを散策した。 

ひとけのない、鬱蒼とした木立に、セミの鳴き声が響いている。 

「セミだね。」 

「うん。セミを探そう。」 

ところが、どうしたわけか、鳴き声はするのに姿が見えない。 

末っ子と一緒に、首を90度に曲げて、ぐっと木を見上げる。 

木が高すぎる───。 

宮島は神様の島だから、むやみに木を切ったりしないのだと聞いたことがある。 

だから、森は植生がとても豊かで、高木はとても背が高い。 

家の近所の街路樹とは、モノが違う。 

セミは高い木の上のほうで、影も形も見せずにゆうゆうと鳴いていた。 

キミタチニハ、ミツカラナイヨ─── 

というように。 

見上げた木の葉の隙間から、青い空が覗いていた。 

それを見て、自分が子どもの頃、夏に新潟の神社でセミとりをした記憶がふっと蘇った。 

たくさんとれた日で、最後に籠を開けると、セミたちはいっせいに舞い上がり、木の葉の隙間の空に飛んで行った。 

おそらく宮島ほど高い木ではなかったが、とても高いように感じたのは、自分が子どもだったせいかもしれない。 

あたりには、相変わらずセミの声だけが響いている。 

結局、粘り勝ちした末っ子が、一匹だけ少し下のほうにとまっていたセミを発見した。 

お馴染みのクマゼミや、比較的小さなニイニイゼミとも違って、かなり小型のセミだった。 

そのときはわからなかったが、数年後、立派な子ども昆虫博士に成長した末っ子によると、あのとき見たセミは「たぶんチッチゼミ」だということだ。 

宮島では、春にもハルゼミというセミが鳴くらしい。 

いつか末っ子と探しに行きたい。 

なぜ広島で「あなごめし」が愛されるのか 宮島で名物あなごめしを味わう/あなごめし うえの

瀬戸内海が育てた、宮島の味

宮島で何を食べるか迷ったら、まず候補に入れてほしいのが「あなごめし」。焼きガキやもみじ饅頭と並び、長く愛されてきた宮島の味です。

実は瀬戸内海沿岸は、江戸時代から続くアナゴの名産地。広島藩の地誌『芸藩通志』には「……阿奈呉(あなご)皆当島辺の産、味佳なりとす」と記されており、古くから美味な魚として親しまれてきました。宮島を訪れたら一度は味わいたい宮島グルメのひとつです。

大正時代に使用した駅弁のレッテル
冷めてもおいしいあなごめし弁当 2700円(並)

旅人に愛され、宮島名物へ
駅弁から始まった、あなごめし文化

そんな「あなごめし」を語るうえで欠かせないお店が、創業明治34年の老舗「あなごめし うえの」です。

うえのの創業者・上野他人吉は、当時開通したばかりの宮嶋駅(現・宮島口駅)で駅弁「あなごめし」を販売。宮島を行き交う旅人たちの間でその美味しさは少しずつ広まり、今では宮島を代表するグルメのひとつになっています。

120年以上経った今も、その人気は健在。県内外から多くの人が訪れます。

では、その味はどのようなものなのでしょう。

見た目は驚くほどシンプル。香ばしく焼き上げられたアナゴの蒲焼がアナゴのあらを炊き込んだ味飯の上に整然と並びます。一口食べると、アナゴの旨みとタレの染み込んだご飯が重なり合い、素朴な見た目とは裏腹に奥深い味わいが口の中に広がります。

出来立てのあなごめし 2800円(並)
お昼は行列もできる人気店

宮島へ向かうその前に
旅の始まりを彩る一膳

店舗はJR宮島口駅のすぐ近く。趣のある店構えに加え、フェリー乗り場へ向かう人たちでにぎわう宮島口の風景もまた、この店ならではの魅力です。

落ち着いた店内で味わうのも良し、お弁当を購入して旅のお供にするのも良し。店内では出来立てを楽しめる一方、お弁当は時間が経つことでアナゴの旨みやタレがご飯になじみ、出来立てとはまた違ったおいしさを感じられます。

旅の高揚感とともに味わいたい、宮島を代表する味です。



【DATA】
■あなごめし うえの
住所/廿日市市宮島口1-5-11
TEL/0829-56-0006
営業時間/10:00~19:00(弁当は9:00~売り切れ次第終了)、水曜~18:00
休み/なし

ゆるりと時間が流れる町家通りの古民家カフェでパキスタンカレーを味わう/ぎゃらりぃ宮郷

町並みに溶け込むように立つ
元杓子問屋を改装したカフェ


宮島には魅力的なカフェが数多くありますが、個人的にお気に入りなのが、町家通りにある「ぎゃらりぃ宮郷」です。

杓子問屋を営んでいた築250年の商家を再生したギャラリーカフェで、江戸時代の面影が残る建物がとっても素敵! 風情漂う町並みに溶け込むように立っていて、お店の前にはレトロな丸型郵便ポストもあります。


坪庭に面した特等席で
心癒やされるひととき

店内に入ると、スタッフの皆さんが優しい笑顔で迎えてくれます。

カウンターや大きなテーブルなど、さまざまな席がありますが、おすすめは坪庭に面した4人掛けのテーブル席。


季節ごとに変わる景色を眺めながら、ハンドドリップで淹れるコーヒーや自家製のシフォンケーキ、ふわっふわのかき氷(夏季限定)などが味わえます。

ギャラリースペースでは、絵画や書道、写真など多彩な作品展が行われていて、アートに触れられるのも魅力。ゆるりと時間が流れる空間に、心も体も癒やされるはず。

一度食べたらトリコに
スパイス香るパキスタンカレー


ランチには、パキスタンカレー(1000円)をぜひ。

「宮島でスパイスカレー!?」と思うかもしれませんが、本格的な味で一度食べたらトリコになる人が続出中。私もその一人で、取材で宮島を訪れた時に何度も食べました。

鶏肉と野菜とたくさんのスパイスをオリーブオイルでじっくりと煮込んでいるんだそう。うま味がギュッと凝縮され、スパイシーな香りと深いコクが口いっぱいに広がります。キャロットラぺは箸休めにぴったり。


地元目線で書かれた記事が魅力
「宮島町家通り通信」を発行


「ぎゃらりぃ宮郷」の店主・宮郷哲弥さんが、「酒と器 久保田」の久保田渉さん達と発行している新聞があります。

『宮島 町家通り通信』は、宮島の歴史や文化、行事などを地元目線で紹介する宮島愛たっぷりのかわら版。2015年から年に4回発行され、2026年春号で43号目を迎えました。

「島民ならではの切り口と内容の濃さを心がけています。昔のガリ版刷りのような懐かしい紙もこだわり」と宮郷さん。

町家通りの店舗や宮島桟橋・宮島口の観光案内所などで無料配布しているので、ぜひ手に取って読んでみて。


【DATA】
ぎゃらりぃ宮郷
住所/廿日市市宮島町幸町東表476
TEL/0829-44-2608
営業時間/10:00~18:00(LO17:30)
休み/水曜